7         街占物語        龍神堂本部

 今夜の下通りはイベントがあっているせいかアーケ−ド中央の照明が点いたままである。夜に華咲く煌びやかな蝶のように夜の帳(とばり)が降りての出店と往きたいところであるが、仕方なしにいつも出している場所で見台を組み立てる。
 あんまり明るいところでは人の目があるため相談者も遠慮することがあるのだ。
 自分としては、売卜(ばいぼく)のためつい考えてしまう、家賃やローンや生活費それに教育費など生活関連の支出が待つのは他の人と同じなのだ。
 
 それから間もなくして
 「こんばんは、みて下さい」と声がかかり顔をあげて見ると、時々来ている若い娘であった。
 「今日は何を観ればいいの」と聞いてみると、また彼氏のことである。前回の彼氏とは駄目になったらしくこちらが観て占った通りの結果になったためかまた相談に来たらしい。相談をうけて常識的な答を出すなら誰でも出来る、常識で考えて何もかもわかるならば日航機墜落事故や阪神淡路大地震の犠牲者など出るはずはないのだ。常識判断をしてそのことで今まで他人を奈落の底に突き落とす結果を生んでも知らんふりを決め込んでいる者や占い師は五万といるのだ。

 そこで相手との相性を霊視してみれば良い人が見える。少し勝気で負けず嫌いな点はあるがいいのではないか。
 そのことを伝えると、
 「わっ、ほんとですか良かったぁ、」と一安心のようである。そして続けて言うには、
 「今度連れてきますので彼のこともみて下さいね」とのことである。了解した旨伝えると相談料金を渡して新市街の人込みのなかに見えなくなって行った。

 それからしばらくして来たのは今で云うスト−カ−的男、五月蠅い男である、ある宗教の名前を語り自分に挨拶に行くようにとしつこい、あまりしつこいとこちらも堪忍袋の緒が切れるが長くは留まらないのが玉に傷だ。用事があるならある方が先に来るのが筋と云うことをいつも教えてやっているのだが・・・

 そしてそのスト−カ−が帰るとすぐに次の相談者である。

 「実は他でみて貰ったのですが相性は良いので結婚は大丈夫ですよと言われましたが、何か腑に落ちないところがあるので見て貰いにきました、お願いします」とのことである。一見真面目そうな女性である。市内で占いをしているところで観て貰ったが不安になりこうして今来たのだと言う。
 相性占いと云ってもいろんな見方があるが九星やタロットなんかで見ただけの相性でよく大丈夫などと言えるものだとびっくりする。人の相性ほど難しいものはないのだ、知らぬと云う事・知識がないことほど怖いものはない。

 そこでこのふたりの相性を拝見してみると、とんでもない相性である。どちらかが我慢していれば短命にてこの世を去るか、大事件・大事故に片方が巻き込まれる相性なのである。流石にここまでの相性鑑定は今の熊本レベルではできなくて当たり前であるが、大凶がどうして大丈夫になるのか?ほんとにビックリさせられる。その結果を伝えると
 「そうですか、そうなんですね、私は彼のなかにどうしても信じきれないものというか今ひとつ安心できないものがあったのでこうして今夜は相談しにきました。みていただいて良かったです、失敗しなくてすみました」とお礼を言い相談料金を置くと何度も頭を下げながら帰って行った。

 続いて来たのは男性、相場をしているらしく今年はどうだろうか?との事、聞いてみると
 「主力株中心に売買をしている」とのことだが損が続くと言う。
 素人がプロ気取りで挑んでも初めから株屋やディーラ−に勝ち目はない、資金量も違うしそもそも株屋には無い株さえ空売りできるのだ。おまけに注文伝票を受け付けてから発注するためつけ根が変わり過ぎ約定さえおぼつかない。だから負けて当たり前である。

  そこで顔を見ると暗黒運に霧まで刺す、
 「さっさと止めて家族孝行した方が良い」と言うと、気にいらなかったようで、黙したまま見料をさっと置くと帰って行った。
 ろくに勉強もせずに勝てるほど相場の世界は甘くない、信用取引の詳しい仕組みも知らずに株を買う人がいるのには本当に驚く、手数料稼ぎの株屋に何を聞くと言うのだ・・・・・「当時は100万円の取引だと4000円程の手数料だったと思う。最も今ではかなり安くなった。
 
 どこかの和歌山県の宗教が株屋に資金の運用を任せていたと云う、あほかと思う良い客が飛び込んだものだ良き手数料稼ぎの餌が飛び込んだものだ、逃す手はない甘い汁を吸われた結果だな、人任せなどありえない所詮人の金だから7億円以上損してもなんのことはない。自分の腹は少しも痛まないのだ。・・・・・・


 人は何でも常識で考えたものしか信じないことが多いのもこの世の常、科学や常識がこの世を支配しているものだとの信念を持つからだろうが果たしてそうであろうか?常識や科学を超えた世界があることを知らないだけのことである.
 また偽物や購入してきた白蛇を祀りそれを見れば金持ちになると思う何にも知らぬ民衆と手伝いの恥知らずの者達と天部の神の怖さを知らない大衆。
 行者のまね事をして塗香もせずに汚い手でお札を触る愚かな者達・・・・・・

 霊感や霊能力がないから名前やタロットや水晶などの雑占でしかみる事が出来ず、霊能力がないから何でもかんでも先祖や相談者や人のせいにしたり常識的な事しか言えずこれが昔、占業が審査と許可制であったのも頷ける。
 そしてひどい輩は占いを統計学等と人に客に説明している。少なくとも命理学と易は法則である。
 神官だから僧侶だから霊能力があるというものでもなく修行したからと云っても身につくものでもない。何でも有難がらせて信者を来させる時代は霊能力者以外終わったのである。
 行者が30年かかる行でも霊能力者は7日間で終わるのだから。力のない者からは嫉妬される。

霊能力のない神社や寺は段々と消えて行くのは当たり前全国を見れば歴然だ・・・
 聞きに行って霊能者の真似をしていても嘘はすぐにバレルものだよ。

 
今夜も少しは人の役に立ったと自負してここ下通りの繁華街を後にした・・・




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