街占物語   龍神堂本部

 いつものように今夜の街占に出かけようとしていたら家内が、今夜のお客は少し手こずる人が来るみたいよと言う。
しかし余り気にもとめないでいたら続けて言うには、歳は45歳で作業服を着ていて手には小さいバッグを抱え頭には帽子をかぶり、顔は鰓が張った人だから直ぐわかるよとも言う。

 先月の夜中の午前2時半頃、誰か人がこっちに向かって来ている、しかも3人で来ているよと言って実際夜中の3時に玄関をドンドン叩く音がして起こされたのである。この時家出した子供を捜して欲しいとの相談であったが当てているし、その他にも宝くじの番号や競輪の1・2・3着の全レース的中の霊視実績もあるが、こちらとしてもビクビクしているようではこのハードな街占は務まらず基より当たり前なことで、注意しておくからと言い自宅を出た。

 下通りには夜の8時には着き直ぐに見台を組み立てるといつものように行灯にロ-ソクを立てて火を点け準備万端後はお客のご到来を待つだけになった。
 何時見ても変わらぬ下通りの商店街、時折サイレンが鳴って喧嘩の騒ぎや酔っぱらい、そして通行人に片っぱしに声を掛け店にお客を誘導する人もいて、騒々しさに溢れているのはやはり全国共通。

 それから30分経過しても誰も来ない、来るのは時々話して行くだけの人ばかりである。やはり今日は何か違う、 そこで出掛けに家内の言ったことが的中するんだなと早くも悟ったが・・・

 そこへ
 「見てください、いいですか?」と中年女性のお声がかかる。
 「はい、どうぞ、何をみましょうか?」と聞けば、
 「実は夫が昨日から全然口を利いてくれずほとほと困っているのよ」とのこと。
 「では口を利いてくれないのはなぜか、その理由をみればいいんですね?」と問えば
 「そうなのよ、お願いね」とのことで占うことにした。しかしその前にこの女性、物言いは優しいが余りにも優し過ぎる、それにこの色香・・・・・
これはこの女性の優しさと、この言葉が原因であろうと考えてみたがやはり出たのは火雷・・
 そこで
 「これは奥さんの優しさと言葉の魔力が原因です、つまりその口を利かなくなった前の日に御主人の前で誰かと話をしませんでしたか?そして同情心からついつい余計なことまで話ませんでしたか?」と問うと、
 「あぁ あの時のこと」との言葉が返ってきた。 やはりそうだったのである、つまりは夫のヤキモチだったのである。
 近所の他の男性に優しく親切に話していたためにそれを見聞きした夫がヤキモチを焼いたのである。
 従って今夜帰ったらそのことをじんわりと夫に言ってみることを勧めたのは言うまでもない。
 幾つになってもヤキモチを焼く人はいるものでなんとも羨ましい限りであった。
 
 それから10人程相談者が来たあとでひとりの男が見台の前に立つ。見ると歳は40過ぎで、作業服を着ていて左手には小さなバッグまで持っていて家内が霊視した通りの男である。そして黙って手を差し出すので、手相は500円の見料になりますがと言うと、なんだ高いじゃないかときた、なる程そうかと思ったが、そのまま繰り返すと、ろくに見ることもできないくせに、ここに出すんじゃないよときた。 なんだと、ここは天下の公道だから勝手だろが、と言いたいが
言えずにいると、さっさと畳んで帰れとも言う。

 昔からシマとも言い縄張りがあるのである事は百も承知しているが少し違うとみた。 どうも無神論者で誰からも相手にされず身内からも尚相手にされず当然妻も逃げ出し生涯孤独な人生の波の中で、もがき苦しんで行く相を持つ。
 そして帰り際には見台を蹴飛ばして帰って行き、家内の霊視がまたまた的中した事になった。
まぁ他にも出している者がいるが、自分は異端児だから狙われるのだろうと考え少しは有名になったのかも?等と、自己解釈したら嬉しいやら、おかしくもなった・・・・
 街占ではこれくらいのことは当たり前でその時だけで後ではもう忘れてしまっていたが、今回霊視の件を書いたためにそういうこともあったのを思い出してしまった。

 それからまた10人程の相談者が来たが予定の午前2時をオ-バ-し急いで帰りの支度をした。
このとき時計はもう午前3時になろうとしていた熊本の深夜の下通りであった・・・・・



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