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      龍神堂本部

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 今夜も準備を調えていつものように熊本市内に車で向かった。そしてパ−キングに車を停めて街中へと歩く。
 街中の人々、商店のウインドウを飾る商品、、そしてそこに踊り着飾るマネキンの数々・・・変わり映えし
ないデザイン、しかし、そんな中で変わったと思えるものを挙げるとするならば、若い人のファッション位か。
 そのファッションだけは変化してきているように思う。新幹線の延長、航空便の増発に伴い情報発信の都会から
の熊本への進出が増えてきていることを現しているのかも。現に大都会から熊本に進出している会社・ショップは
確実に増えている。

 その後相談者を待つこと50分やっとひとりの男性が見台の前に立つ。
 「何をみてもらえますか?」と言うので、
 「何でも見ますよ、どんなことでも構いませんよ」と言うと、
 「実は今母親が病気をしていましてこのままでは入院になるかも知れませんので、病気が治るか、また何が、原因なの
かを知りたくて伺いました」と話される。

 「わかりましたお調べしてみます」と応えてお名前生年月日住所を伺ってみた。そしてこの相談者の顔を観てみると、
母親の塞ぎがちな姿とともに大きな家の縁側とそこにある石が観える。これはおかしい、何か因縁が蠢くことを読み思い切
って
 「あなたの家は大きな家で縁側にも庭がありそこに以前持ち込んだ石があると思いますが」と伝えると
 「はい、石なら築山をしていますのでそのとき業者に頼んでしてもらいました」と言う、そこで
 「その石の中に妨害をする悪因縁の石があります」と言うと、

 「今思えば築山ができた頃から怪我や病気や人とのトラブルが多くなったと思います」と言うので、こちらも
 「その中のひとつの石が持ち込んではいけないものです、災いの石です」と答えた。そしてその築山を見にいくことになり
翌日の約束をして帰ってもらった。築山をしたことでの因縁災難数知れず注意して行うことである。

 次にきた相談者は老婆。見た途端うけたくないものを感じたので断わろうとしたが先に料金を置いてしまったので風に飛
ばされないよう掴んでしまったために仕方なく応じた。開口一番
 「お金を貸しているが返るか」とのこと、そこで借用書はあるかと聞くとそれはないと言う。
 「それでは証明のしようがないので無理ですね」と言うと即座に占断、でたのはヒ、これは嘘と見て

 「証明のしようもないし思い違いもあるので当時のことをよく思い出してみることですね」と言うと、間違いないと食い下が
る強欲婆、こちらもムカッとして
 「嘘つくな!」と一渇してやったら何やらビックリした顔になり慌てて帰って行った。
 こちらが貸したと言えば金でも脅し取ろうと思ったのか悪徳婆、いろんな者がいる街占。やはりうけなければ良かったが
しかたない。その後はパラパラと来る相談者・・・・・・     

 ここに出していると見た顔の人やもちろん知り合いの人も通り過ぎて行く、そんな中に学生時代の同級生の顔もあった。
向こうも気がついたようだがまるでこちらを蔑むような顔をして通り過ぎて行ったのが印象的であった。まあ当然だろう親で
さえ初めは嘆いたのだから・・・・・・・その親も亡き今、どう思っているだろうか?

 そして今夜も時間は午前1時半ひとりのお客である。
 「何を観ましょうか?」とこの相談者の女性に質ねると、少し時間を置いた後
 「実は今の彼と別れようかと思うの」と言うので、おそらく仕事もしない男であろうと見て、 「拝見しますので」と言い

 断易で見てみると、用神休囚してしかも伏神、男の愛情の無さが出ているし、それ程までにこの女性は男に対して愛情
があるのか?と考えるが、それも過去のことで今はもう薄れたと見る。だからこそ今こうして来ているのだ。

 相手がその筋であればこちらにも飛ばっちりが来るかも知れないとも思うが、イチイチそんなことを気にしていたのでは
この仕事はできない。そこで

 「これはもう厳しいですね、相手は貴女の収入だけが望みです、この儘だと一生夜の世界に縛りつけられていきます」
 と答えると、

 「やはりそうなんだね、もう耐えられないので怖いけど別れることにするわ」と言い、そしてそのあと、なんと
 「もしそうなったら一緒に逃げてくれる?」と言う・・・・・・・
  今初めて会った女性としかも一緒に逃げるとは、自分にとっては映画の世界と同じであり、聞こえなかったふりをしてい
ると、黙して見料を机に置き、ひとり淋しそうに雑踏に紛れて見えなくなって行った。

 やはり、誰だって孤独の中に生きているのはおんなじなのだ、この女性も淋しかったのだろう、決断できるか疑問もある
が、幸せを祈らずにはいられなかった今夜の街占であった・・・・・・


 次の日玄関のドアを叩く音がするので出てみるとクラブのオ−ナ−だった。どうしたのか聞いてみると何しろ忙しく今日も
予約のお客で一杯と言う。それは結構ですねと言えば人が集まらなくて困っているとのこと。あてにしていた男も独立した為
困っているので手伝ってくれないかと、ほんの2時間でいいからとのことなので、早い時間ならいいかと思いまた、日頃から
お世話になっている人からの頼みなので手伝うことになったのである。

 出店前の2時間であれば時間の拘束はないし確実なアルバイトにもなる。水商売は東京に出た当時臨時でしたことがあり
どうってことはない。早速今夜から手伝うことにして商売道具の天眼鏡や見台も準備してこの店へと向かったのである。

 店のスタッフにも紹介され今夜からまた新たな人生が始まるが、収入の安定を考えたのは間違いない。

 そして営業が始まると、それはそれは忙しい、次から次へと来るお客で店は満員になるのだ。スタッフも忙しく動き回り、
こちらも当然皿洗いだけではなくビールを運んだり料理を作ったりと何でもやらないといけなくなる。これは最初に予想できて
いた、皿洗いだけでいいと言われたが、多分こうなるだろうと考えていた。しかし、生活のためには仕方ないしもう20歳に
なったので金も貯めないといけないのだ。

 店ではオーナーの知り合いと云うことで他の従業員からは特別な目で見られ仕事も楽で働きやすい職場である。
 今夜は時間の経つのが早くまだ賑わっているのだが約束の時間が来たことで帰る挨拶をするとクラブをあとにした。


 
 其の儘下通りの閉まった商店の前で見台を組み立ててお客の来るのを待つことにしたのである。しかし人通りはあっても誰
も来ない、だがいつもそう思うと突然お客は来る。そこにひとりの女性、

 「見て下さい」と手を出す。見れば細長い、色が白く長い手をしている。これは常に心が敏感で感受性も豊かであることを
現している。そこで
 「貴女は今交際中の人がいて悩んでいるのでしょう?」と思い切り言うと、
 「えっ!」と感嘆の声を挙げ
 「どうしてわかるの?」と聞くので、いつものように「毎日悩んでいるひとばかり見ていますから、何でもわかりますよ」
と答えると、

 「今後はどうなっていきますか?」と聞かれたので、今度は断易で占断してみると、官鬼は休囚していて停滞し動爻からも
飛ばされ凶となる。
 「おそらく相手の心変わりで終わりになると観ますが・・・・・」と答えたら、
 「そうなんだぁ・・・・・」と言い黙していたが見料を置くと急ぎ足で帰って行った。今夜の街占であった。




 次の日は少し遅れて歓楽街に出店した。
 ここ下通りは熊本一番の繁華街でもあり人手は多いし郡部や郊外からの人の流入もかなりある。しかしそんな状況を
見ているとそのうち段々と人の流れも減少したり逆に郊外へと奪われて行くのがこのときから見えていた。

 その時
 「こんばんは、みてもらえますか?」と若い相談者の御到来である。
 「はい、何を見ましょうか、交際中の男性のことでいいですか?」と言ったので、
 「見る前にわかるのですか?」と言う。
 「そうですよ、ここには18歳になる前から出していますからね」と言えば二度ビックリした顔をしたこの女性。
 相性を見てみると男性は関白ではあるが後にはこの女性の尻に敷かれる運命である。但し余りにも束縛し過ぎ
て最後はひび割れる未来が見えたので、あまりあれこれ言い束縛し過ぎないようにしないといけませんよ、と
言えば、
 「やはりそうなんですね」と思い当たるらしく、
 「今夜はありがとうございました」と丁寧に言うと見料を払い銀座通り方向に帰って行った。

 育ちの良さがわかる確っかりしたお嬢さんであった・・・・・





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