今夜もここ熊本下通りの歓楽街は多くの人で溢れている。大きな荷物を持ち重そうにして歩く人、楽しい事があったのか
ニコニコ顔で歩く女性や、孫の手を引いて歩く老婦人、熊本は名前ばかりは都会と思われているがまだまだ田舎である。
しかし近年街中を歩く女性のファッションだけは色とりどりにカラフルさを増してきているように感じる。

 さて今夜は太洋デパート近くにある池田屋のすぐそばに出店した。ここは深夜になると人の流れが変化するのでほんの
3時間くらいにしてあとはまた銀座通りに移動することにしている。
 夜の8時になり今夜の最初のお客は中年男性。
 「見てくれますか?」と言う。身なりも確っかりとした人で今の環境が良好なのがわかる。さしずめ会社の社長と見た。
そこで、
 「今少し悩んでいることがありますがわかりますか?」とまた腕試しである。
 
 街占での腕試しはいつものことであるので慣れているが他の占い屋に当ててみろと言うお客ばかりくれば逃げ出す
占い屋も多いことだと思われる。それ程ここ熊本の街占では腕を試される土地柄なのである。そしてこのお客に対して、
 「それは奥さんのことでしょう」と言い放った自分がいた。すると、
 「おぉ、わかるんだね!」と言われ、ここで初めてお客から信頼されることになったのである。

 元よりわからなければここには出せないしと思うが他人はそうは見ていないのである。当然であろう・・・・
 そしてこのお客の奥さんの心配事などこの問占者の質問に幾つか答えをだして行く事になった。


そしてまた次のお客が来たが2組並んだので急いで見る。どうやらこのお客は会社で失敗をしでかしたらしい、顔にも
それが現れているので、
「会社のことで困ることが顔に出ていますが」と言うと、
 「はいそうです、当たりますね」と返事をした。そこで詳しく見ると、どうやら契約しに行くのに時間を間違えてし
まい○○が○○になり困ったことになっているとのこと。それは顔にも現われているので
 「○○と○○○
で・・して下さい、そうすればあとでは良くなりますよ」と断言した。すると、半信半疑なのか顔はまだ
暗いので再び、
「大丈夫ですから、試しみてそれからまた不安でしたらまたここに来て下さい」と伝え、さっきから待っているお客の
相談に応じることになった、ここデパート太洋近くの歓楽街であった。


 人相が良くない、これは詐欺師の顔である。口では上手いことを言い他人を騙して生活していく男である。

株屋と同じ人相をしていて人を騙しはめ込んで金儲けをして金を盗みとるのだ

しかし料金はキチンと置き平静さを装う。さてどうしたものか?お前みたいな詐欺野郎は見ないんだよ、と言えば
それで済むが多くの占い師がいる中から自分を選んだことから割り切って見ることにした。
 手相は口の上手い相、やはりである。そして聞きたいことをこちらから言い当てたため変に信頼されたのである。
 そして運気は凶、恐らく今年は官の厄介となることを告げた。


 そしてまた次のお客が来た・・・・どうやらかなり深刻な悩みを抱えているようだ。
 人生は楽しいこと、嬉しいことよりも辛くきついことのほうが多い。来るお客や自分のこれまでの体験或いは人の話
からも歴然としている。だからこそ少しでもその重荷を軽くするためにここに聞きに来るのだ・・・・
 顔を拝見すればどうやら人間関係の悩みは歴然だがその他にも悩みが出ているのをこの美人女性の顔に見つけて
しまう。
 「見て下さい」と言えば即断で、
 「貴女は複数の男性と交際していて今そのトラブルに悩んでいますね」と言ったものだから、ビックリしたようで
 「どうしてわかるんですか?」と言う。
 「はい、もうここには8年出していますから何でもわかりますよ」と自画自賛すれば、
 「どうしたらいいでしょう?」と言う。自己責任の言葉はあるが、ここでそれをこの人に告げるのは酷と思えるので、
 「これはやはり正直に伝えるしか解決の道はありません」と伝えると、
 「やはりそうなんですね」と困った顔をしたので、
 「人間反省の心は大事ですよ」と言えば、見料を机に置くと、
 「ありがとうございました」と言い下通りの人混みに消えて行った・・・・そして男性がこの女性に惚れているのは救い
と思う自分がいた。

 それから今夜は生憎の雨になった。この場所は小雨位なら構わないが強く降り出した為仕方なく下通りのアーケード
へと場所を変えたが、そのせいか人が居ない。
 もう今夜は閉店して赤ちょうちんに行く深夜の一人歩きとなった。



 
次の週は少し遅れて店を出したここ下通りの歓楽街、客呼び込みの男達の横を通り抜け時々出している場所に見台を
構える。離れたところから宗教の男女がこちらを見ている。やはり気になるのだろう、しかしそんなことにはお構いなしで
お客を待つ若い占い師・・・・・
 そこに真剣な顔をしたお客が来る。
 「どうかしましたか?」と聞けば、
 「今人とトラブルになっていて困っていますが見てもらえますか?」と言う。その顔には衰退と争いの相が出ていて難儀
なのが歴然としている。
 「わかりました」と返事をして拝見すれば、重ゴンの容にて凶、これは危険な卦である。しかし顔には死相は出ていない
のであるから万が一にも命の危険はないと視て、
 「一応相手ともう一度話してそれでも駄目ならまたここに来て下さい良い人を紹介してあげますから・・・」と答えると、
 「はい、それが話をしても通じる相手ではないのです」と言う。
 「そう云う相手なら大変ですね」と答えて、仲裁人を紹介する事にして教えると少しは顔にも明るさが出たようだ。
 ここで占い御託宣にて安心させようとしても恐怖の現実に対峙しなければただの気休め占いであり以前東京から電話で
質ねてきた死神婆が占いは希望を持たせるなどと勝手にほざいたが、良いことばかり言うて地獄に落ちて行く人間を
何万人も見てきたのだ。
霊能力もないアホにはゴミ占いに縋り死を迎えれば良い。この相談者には現実と立ち向かい解決して行くことの大事さ・
重要さを伝えると
 「ありがとうございました明日行ってみます」と言い帰って行った。また報告がその内あるだろうと考えた今夜の
紙一重の客であった。

続く


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