今夜もここ下通りは相変わらず何の変化もないが、時折鳴り響くパトカ−のサイレンの数が以前より
多く聞こえて来るようになった。熊本も今後は都会並みになって行くのかも知れない。
 そして前方に目をやると着物姿の和風美人がこちらに向かって歩いてくる。出勤前のホステスからの相談
である。
 「こんばんは、今日は観てもらうつもりで早めに家を出てきました、私の今後はどうでしょうか?」と言う。
 「わかりました」と言うと急いで型通りの名前など聞いてみた。

 水商売していても真面目な働き手であることがわかる。しかし聞きたいのはそんなことではないだろう。
ズバリ当てないとへぼ占いと言われ、こちらを信頼してきているのにその期待を裏切ることになるのは
自明の理、
そこで顔を伺うと曇りが漂う、これはおかしいどうも争いのようだ。
 そして
 「今人と争いの波に揉まれていますね、しかも女性との争いであり職場ですね」と断言した。果たしてどんな
返事をもたらしてくるか?それとも・・・・・

 すると、
「そうです、やはり信じてきてよかったぁ」と言う。

 聞けば職場でナンバ−ワンツ-を争う立場にある為この事が最近特にひどくなっているとのこと。そこで
もっと詳しく観てみればどちらも傷を負うことになると出た。それで力があるうちに独立した方が断然有利で
あるし生活もきちんと出来ていくからと占断した。だが本人は店に未練があるようで、
 「少し考えてからまた来ます」と言い出勤前でもあるせいか急いで店のある方向へと消えて行った。

 女性の職場はどこもかしこも皆似たようなもの、客商売だと尚更である。
 そしてその相談者が帰るとそこにあるのは下通りの輝くネオンと酔客ばかりになった。今夜は気分も優れず
店仕舞いして焼き鳥で一杯といきたいと思っていたら相談者の御到来である。
見れば中年男性・・・・・

 「今追われている」と言う、どうだろうか?との問い。
 顔はヤクザ風ではないが堅気ではないことがわかる、そこで今回は断易にて見てみると、出たのは○
 これは逃げるだけでは始まらない、用神世爻にあるが休囚して力がない

そして救神来たり手て力を与える象なので、
 「知り合いに頼んでこの場を脱出した方がいいです」と告げると、
 「う-ん」と言って考えていたが、生命までの危険は出ないと告げたこともあって、見料を置くと帰って
行った。
 それからまた5人ほど相談を受けて時計を見るともう午前2時まえではないか、時間の経つの
も忘れていることがまた酒を遠ざけてしまったここ下通りの歓楽街であった。


 次の日もここ熊本下通りの歓楽街の一角居酒屋焼き鳥店の並びに店を出した。店舗の邪魔にならぬように
少し距離を置くことも大事なことである。しかし店舗の人から見れば目障りな占い屋だと思われているかも知れ
ないが言われたことはない。

 さてもう夜の9時にもなると歓楽街は急に人が多くなる、そして目の前に一人の男性、何か悩みがあるようで
こちらの顔を見ている。こちらがまだ若いので依頼するかどうか悩んでいるのが手にとるようにわかる。しかし
懸念は無用で、
 「みてくれるか?」と言う。
 「はい、わかりました」と言いその男性の手をとり拝見する。意外にもハッキリした線がそこにはあった。そこで、
 「あなたはこれから着手しようかどうしようか考えていますね、それは商売のことですね」と見てしまうと、
 「わかるのか、そうだ、これからどうなるかもわかるか?」と聞かれるので、
 「はい、この商売は人が多く集まらないとできないみたいですね、集客力にかかっています」と言えば、
 「そうなんだ。そして成功するか?」と重ねて聞くので、
 「当初は旨く行きますがあとでは渋滞がくるようです、3年間限定で頑張って下さい」と返事すると、なにやら心
に思い当たるらしく、
「そうか、3年・・・・・」と呟き、見料を置くと帰って行った。


 続いてきた客は男性の二人連。強面であるが、見てくれと手を差し出す。その手をとれば右小指欠損、そして
 「この手相は思ったことは最後までされないと満足できない面がありますが・・・」と言えば、
 「わかるか?」と言われるので、
 「はい、個性が強い点もありますが人からも慕われます」と言えば、
 「そうだな」と言い、的中である。そして今後の特に対人面や身内間のことなどを占うと満足したのか見料を置
き二人一緒に歓楽街に見えなくなって行った。それから今夜は40人のお客の相談に乗り、終われば午前3時前
になっていた・・・・・・



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街占