今夜の熊本下通りは降っている雨のせいで肌寒さを感じる。1枚多く着込んできたのにこ
れである。しかし今目の前に相談者を迎えればそんなことも忘れる。

 「見て貰えますか?」と若い女性相談者。
 「はい何をみたら良いですか?男性のことでしょうね」と聞けば、そうですと言う。
 「彼との相性を見て下さい、わかりますか?」とのことで、わからなければここに出さない
でしょう、と言いたいが早速拝見するここ下通りの歓楽街、時刻は夜の10時。時は昭和54年。

 相性は悪い、専門的に相性を見ると云っても一般の者が見る相性とこちらが見る相性と
では雲泥の差があることを知らない者が多い。普通に良い悪いの判断が誰でも同じと思う
のはバカのひとつ覚えである。

 今迄数十万人もみてきた者が見る相性と4〜5年学んだ者が見る相性が同じで有るはず
はないのだ。
 そしてこの相談者にもそこのところの説明を詳しくすると理解したらしく、
 「そうなんですね」と言う。

 世の中には相性が良いからと言われて結婚して翌年には離婚したり、或いは裁判となり
血で血を洗うほどの争いとなったり、交通事故で家族が命を奪われたりする相性など今迄
見てきた。自慢する訳ではないが相談された人達の心の叫びでもあるのだ。
 これらも数十年もの実占と経験がなければ見抜くことはできない。

 先日は占い師気取りが変な名前を付けて奇病にかからせたりしているのを見たが、この
名付けなどもそうだ。本に書いてあること、或いはネットでの生半可な知識しか知らない恥
さらしの何と多いことかと思う。これでは相談者も浮かばれないのだ。

 さてこの相談者、
 「私もそんな気がしていました、やめようと思います、今日はありがとうございました」と言い
相談料金を机に置くと人混みのなかに見えなくなって行った。



 次の相談者は男性3人組、黙って手を差し出す。こちらもその手をとり手相での相談とな
るが質問もない。そこで
 「貴方の手相は珍しい手相をしていますね、」と言うとやっと口を開き周りの二人も覗き込
む。 そして、

 「どこが?」と聞くので、
 「はい、この感情線ですよ」と示すと、
 「そうか」と言い、そして、
 「これは人間関係では少し波乱がありまして時に非常事態に立たされることが起きます」
と伝えると、
 「それはいつごろか?」と聞かれるので、
 「来年の春頃かと考えられます」と言うと、その3人は顔を見合わせていたが黙して料金
を払うと帰って行った。

 危険な目に遭わないことを祈るばかりである。



 次に来た相談者はまた男性、酒が入っている。プーンと臭う。
 そして
 「みてくれ」と言うので、
 「はい女のことでいいですか?」と言ってやると。
 「見る前にわかるのか?」と言うので、
 「はい」と返事をして相談に移ると、
 「今別れ話が出ているがこれからどうなるのかわかるか?」と言う。そこで占断すれば、
  もう来月までには別れてしまうと読んだので伝えると
 「そんなに早く別れるのか?」と食い下がるので、
 「もうこれはどうしようもありません、早く別れて出直した方が良いと出ています」と答え
た。
 すると暫く間をおいてから、
 「ほんとにそうなった時にはまた来る」と言い残して見料を払うと歓楽街に見えなくなった。

 お客も途切れたので時計を見るともう深夜の2時になり今夜は終了となった。


 また今夜も出店する熊本歓楽街の一角、遅い時間に出したので仕方なくポレエルの前に
した。何時もの池田屋近くは工事があっていて駄目である。
 さて今夜はどんな相談者がやって来るのか?しかしその時師匠がこちらに視線を送るの
を感じたのでその方向を見るが何の変化もない。しかし視線が来る。恐らくここに出したの
で気になっているのだろう・・近頃こちらへの相談者が増え近くに出せば迷惑なのだろう?
別に師匠に喧嘩を売るつもりもないがこちらも日々の生活と目標があるのだ。なぜなら2度
ほどそれらしき事を言われたからだ。明日からはまた元の場所に出すつもりではいる。
 今夜はスミマセン。

 今夜の最初のお客は派手な服装のおネエさん。超ミニスカートが眩しい。
 「見て欲しいのだけど?」
 「はい、同居中の人でいいですか?」
 「えっ、どうしてわかるの?」と言う。
 「きれいな人はそんなものですから」と言えば
 「ふぅーん」と言う。すぐに占断。ハードな象が出現。これは相手が仕事をしていない。
 そこで、
 「相手が何時までも仕事をしないので別れようかと考えているのでしょう」と言えば、
 「当たり!そうなのよ、やはりそうした方がいいでしょう、もう2年になるのよ」とのこと。

 今後も仕事をする気はなくこの女性の収入に頼る生活を続けていくつもりらしい。そこで、
 「もう一度、今度は期限を切って話して下さい、そして駄目ならその時に別れを決断して
下さい」と伝えた。すると、
 「あたしは、もう決めているけどそんなのが出てるなら最後と思い話してみるわ」と言い
見料を置くと歓楽街方向に消えて行った超ミニの相談者であった。


 次に来た相談者は男性。それらしき人であるが物腰は柔らかい。
 「時々見ていたが今日は見てくれるか?」と言う。
 「はい、どうぞ」と言い相談をうける・・・・・
 手相でみれば強い相はあるがやはり孤独相である。上位に立つも孤独さからは遁れら
れない相である。そこで、
 「上位に立ちますが今後に於いては良き協力者、片腕がどれだけできるかの問題が起き
るようです」と答えると、
 「そうだろうな」と返事をされた。これには意外であったがそうなのだろう・・・・・
 そして少し話したあと、黙って見料を置くと
 「頑張れよ」と言って歓楽街に見えなくなって行った。
 
 見かけは強面であるがその心のなかは優しさが溢れていた・・・・・


 次に来た相談者は女性、男性と一緒である。一見したところ恋人同志である。
ここは場所柄水商売、風俗関係のお客も多い。そして、
 「見てもらえる?」
 「はい、何を見ましょうか?、商売を考えていますか?」と聞けば、
 「そうよ、わかるの?」と言う。男は常に無言である・・・・
 「はいいつも沢山の人を見ていますから」と言えば、
 「近々商売をするので大丈夫かみてくれる」とのことで占断。

 出たのは天水訟の履、これは失敗の容。そこで、
 「希望や周りの人の勧めもあり動きそうですがいかんせん1年もすると、こんな筈ではな
かったとなり商売は失敗となります。まだまだ2年は資金を貯めてからが良いでしょう」と
言えば、しばらく考えていたが、
 「そうなんだんね」と言い、その男と顔を見合わせていたが時間も遅いこともあって料金
を払うと手を繋いで帰って行った・・・・・

 もう今夜は深夜の2時を過ぎ師匠もその姿はなく、明日からはまた池田屋に移動する
ここポレエル前での街占であった。




 何時しかここ熊本市内にも雪がチラつき出した。寒い季節は苦手なここ銀座通りの歓楽街の
一角。時刻は夜の10時・・・・・
 今夜は寒いので道行く人も急ぎ足である。そこで1時間待って誰も来なければ店終いして
帰ろうと考えていたら相談者の御到来である。見てすぐに複雑とわかる。

 「みてもらえますか?」と言葉遣いは丁寧である。そこで、
 「はい、大丈夫ですよ、身内のことですよね?」と言えば、
 「はい、そしてわたしのこともいいですか?」と言う。どうもこの女性には神仏がついている
ように見えるが何か災いをうけていてそれも身内にまで及んでいるのではと見たので聞いて
みると、
 「わかりますか」と言う。もちろん手相などでわかる問題ではないのである。
 そこで言うには、
 「神さまのおかげで今日まで過ごしてきましたが近年は良くないことが続きますのでここを
通っているときにお見かけしていましたので今夜は思い切って御相談しに伺いました。」と
話される。

 ここ街頭では18歳前から出しているがこの手の相談は年間100件位でそんなに多くは無
い。そこで霊視すればこの人の身内(親)が他所の神にお伺いをした容が見えたので聞い
てみると、
 「そうです」と言う。そこで
 「これは○○○を○○にして○○しておれば良くなりますよ」と答えると、
 「ほんとですか、そうなんですね、わかりました」と声が明るくなったのがわかる。
 そして見料を払い帰ろうとするので、どうして私を選んだのか聞いてみたら、
 「なんか大丈夫そうと思ったからお願いしました」と言い、帰って行く相談者であった。
 やはり信仰心のある人にはそれなりの力が備わっていると改めて感じた日であった。



 深夜になり今日は寒さも強まりそうなので帰ろうかとしているとお客の御到来である。
ここ歓楽街は水商売関係や風俗関連の人からの相談も多い。
 「寒いね、見てもらえる?」と相談者。
 「はい、何を見ましょうか?」と聞けば、
 「最近身体が疲れやすくて何が原因かわかる?」との質問であった。もう答えは出て
いるのだが確認するために検査は受けたか聞いてみるとうけていないと言う。そこで、
 「病院での検査で判明すると思いますがウイルス性の病気だと思います。その為に
身体が疲れて体力が衰えて行きます」と答えたが○肝炎は伏せた・・・・・・こちらが
伝えても当人が動かないならどうしようもないのであるが肝臓は伝えた。
 すると、
 「そんなのが出ているなら明日お店を休んで病院に行ってみるわ」との返事である。
 こちらも、治療には長い時間がかかるのを読んで、
 「そうして下さい、少し時間がかかりますが・・・」と言うと、
 「そうね、ありがと」と言うと、ひとり淋しそうに帰って行く後姿がそこにあったここ下通
りの深夜の歓楽街であった・・・・・・

街占物語・1〜

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