今夜もまた下通りの繁華街・歓楽街に犇く飲み屋街の片隅に出店した。最近お客が付く為か他 に出している占い師の視線を多く感じる事が多い。気のせいであればいいし考え過ぎかも知れな いが。 ここに出しているのも師匠の顔であるし出している以上は恥ずかしくない占断をしなければ笑い 者になることは歴然としている・・・・・ 少し雨がチラつき始めたが今出している場所は雨には濡れず有り難い。 しかし誰も来ない、そんな時はいつものように持参した本を読むのも日課になっているのだ。 断易の本に宗教書等時間は限られているがいつしか時間が経過して行き夜の9時半を過ぎた時 「こんばんは」と、明るい声の方を向くと、そこにはきれいな女性が立っていてこちらを見ている。 すぐに、 「どうぞ、何を見ましょうか?」と聞けば、 「あのぅ、わたしはいつ結婚できますか?」との質問であった。 女性のしかも若い女性の悩みの一位は今も昔も、結婚の悩みである。そこで、 「わかりました拝見してみます」と言い、その女性の出している手相を観てみれば、結婚線の 勢いは弱いのがわかる、そしてそれに伴い運命線の勢いが大きく出ているではないか。 これは社会では仕事運が強く次第に結婚が遠のき易いことを現している。しかし、このときは 断易で占断してその結婚運を招くことを考えている自分がいる。しかし出たのは官鬼なき卦であり これも味方しないことがわかる。そこで仕方なしに、 「拝見しましたが貴女には仕事運が強過ぎていつも完璧に仕事を仕上げていかれるようですので 結婚運が弱くなります、従いまして来年あたりから結婚への考えを改めることが必要ですが」と伝 えると、 「そうですか?確かに仕事は好きで今の会社に入りましたが」とのこと。そこで、 「できれば休みの日は街に出たり、おいしいものを食べに行ったりして人の多いところに行く事 ですよ」と答えれば、 「そうなんですね、そう出ているのであればそうしないといけないかな?」と言うと笑い顔で、 「ありがとうございました」と言い見料を粗末な机に置き新市街の方向へと帰って行った。 街に来た相談者が、今夜のように占断した内容を実行してくれれば嬉しいのであるがまだ19歳 にも満たない自分のような占い師の言うことを信じてくれてどれだけ実行するのかは疑問はあるが いつも真剣に聞いてくれているのでそこまで考えても取り越し苦労かも知れないと思い次のお客を 待つ・・・・ 続いて来たのも女性である、和服の似合う和風美人である。 「こんばんわ見てもらえるかしら?」との質問。そしてまた、「若い方ね〜」と言われる。慣れ てはいるが、 「またか」と思う。 「はい、しかし当たりますから」と言うと、不思議と「でしょうねでないと出さないでしょうね」 と言われて、とても理解を示す和服美人・・・・そこで真剣に、 「ご商売をされておられますよね、今後の御商売と従業員の事を見ればいいのでしょう?」と 言うと、 「わかるの!そうなのよ」との事でピッタリでお客の方も色々と話してもらえた。 やはりここ繁華街には飲み屋に小料理屋など同業の店もかなりあり競争は激しい。店にとって も常に決めれる料理に経営者の工夫やお客を引き寄せるアイデアは常に必要であるようだ。 今後は「新たな改革も必要ですが方向性は大丈夫のようです」と言えば、 「そうなんですね、良かった」と言われ、こちらも安心した。 しかし外せばここ繁華街中に噂がたち営業は休止になる恐れがあることもわかっている。 そこに雨が酷くなりだして帰る人々も足早になりだした今夜の街占であった。 今夜もまた何時ものように熊本の歓楽街たそがれ酒場通りの片隅に見台を置き店を構える。 そして組み立てていると突然血の匂いが漂い始めた、これは何事か起きる、突発的に事件が 起きると読んだのでこの場所から離れた方が良く仕事どころではないのであり、それなりに急い で片付けをしていたら、突然の叫び声である。喧嘩が始まったのがわかる。それもヤクザの喧嘩 でありネオンの明かりの中に日本刀がキラッと光り乱闘である。そしてその日本刀を何度も振り 下ろしている姿を見た。 とばっ散りはご免と急いで離れたがすぐにパトカーのサイレンの音で20台ほどがかけつけたの であった。 やはり歓楽街はいつ何が起きるかわからない危険さはどこにでも潜んでいるのだ。 そんなこんなで今夜は場所を新市街寄りへと移動させた。 そして待つこともう1時間にもなるが誰も来ない。移動させたためにこう云うことにもなるのだと 改めて思う。 しかしそこにひとりのお客が来る。ひとりの御老人である。こんな御老人が一体どんな相談を こんな若造占い師にするかと思い、話を良く聞いてみると、 「幾つまで生きるか見れますか?」と言う。成程寿命の相談であったか。ならば手相が早いが だとしたら余りにも簡単過ぎる・・・・・89歳まで生きてきたその老人に簡単に手相で寿命を伝え るほどへぼ占いと言われるのみか、軽はずみであると考え手相及び霊視にて神の意見にも手を 貸してもらう。出たのは○○歳の冬と出たのである。そこで、 「健康にも今迄通り気をつけていけばまだあと3年は大丈夫ですよ」と伝えると、 「そうかそうか、ありがとう」と言い笑顔で見料を置くとまだ先程の事件の余韻が残る下通りへ と帰って行った。 それから今夜はひどく疲れた為早々に店を畳み知り合いがしているバーへと足が向いていた。 今夜もまたいつものようにここ下通りの歓楽街たそがれ酒場近くの片隅に店を出した。酔客が 多いのは仕方ない、皆飲みに来ている場所であるし熊本一番の歓楽街であるから・・・と考える。 夜の10時を過ぎた頃ひとりのお客が来る、中年男性である。 「なんでも見れるか?」と聞いてきた、 「はい、なんでも見ますよ」と返事をすると、そのお客が言うには、最近妻が口うるさくて仕方 ないとのこと、そこでその原因が何か何から来ているのか見てくれ、との相談である。 もう見る前にわかったのであるが一応その人の手をとり拝見するとやはり勢いの弱い妻の尻 に敷かれる手相をしている。 そこで、 「これは時には奥さんに言うべきは言うことも大事ですし、黙していても尻に敷かれた侭になり ますから、一度ガツンと意見すべきです、毎日外で仕事でくたくたになっていて立つ瀬がありま せんから、と言うと、 「そう出ているのか?」と聞くので、 「はい出ていますよ」と言うと、家では妻の言う通りにしてきたがもう限界だと言う・・・・・ そして見料を机の上に置くと、 「今度から今言われた通りにしてみる」と言うと飲み屋街の方向に歩いて行った。 家庭では安らぎの場所がないためにここ飲み屋街を訪れるのであろう・・・・・と考えると心に 虚しさを感じる今夜の街占・・・・・ 次にきたお客は女性、しかも美人の相談である。 「みてもらえるかしら?」と言うので、「はい」と言い顔を拝見すると男性のことが出ている。 どうやらこの女性はママであり店のお客のことをみて欲しいと読んだので、 「店のお客さんのことでしょう?」と聞いてみると、 「あら、そうなのよ、わかるのね」と言われ、 「実は今ね結婚を申し込まれているのよ、それでどうしようか迷っているのよ」と言う。 あまり詳しくは話さないが相手はどうやら医者らしい。そこで相性が良いかも拝見してみると 吉と出た、しかしこの女性も商売をしているので結婚して店を辞めるのを迷うようだ。 「相性は良くお互い干渉し過ぎればあとでは波が立つかも知れない部分はあるので、その点 を注意して行けば良き家庭が築けますよ」と占断したのであった。すると、 「ほんと、相性もいいなら良かったわ、ありがとう」と言い下通りに帰って行った。 続きを読む 街占物語へ戻る |