ここ熊本の歓楽街での街占もあっと云う間に1年半が過ぎて今年は二十歳を迎える。それなりに頑張り師匠
の信頼をうけてはいるがまだ心のどこかには空白の部分が覆い被さっているのがわかる。しかしそれが何なの
かははっきりとは掴めていないのも事実なのであるから・・・・・

 さて今夜は下通りの路地光琳寺通りに面した歓楽街の片隅に店を出した。ここは最初の頃出していた場所
でもあり古巣に戻ってきた感があるのだ。通りも狭く車一台がやっと通れるところではあるがそれなりに
お客はあるのだ。

 さて今夜も22時を過ぎどんなお客が来るのか期待をして待つことにしていると早速ひとりの御婦人が、
 「こんばんは、みてもらえるかしら?」と、やってきた。
 「はいどうぞ拝見いたしますよ」と返事をして先ずはそのお客の手をとり手相を観てみる。
 
運命線は縦に真っすぐ登り勢いがあり、この人が職業婦人運であることを現している。しかし感情線には乱れ
の相があり少し理屈っぽく気の強い面をも併せ持つことがわかる。そして顔からは家に居て休職中の夫が視
えたので、
 「貴女は少し気の強い面があり男性とも肩を並べることもありますが、今は夫の仕事や今後の生活のことが
心配でここにこられたのでしょう?」と言うと、
 「えっ、どうしてわかったの、わたしとは今夜が初めて会ったんでしょう?どうしてわかるの?」とビックり
して聞いてくるので、つい

 「占いコンクールで優勝したものですから・・・」と冗談でつい答えると、
 「えっ、そうなの!」と言い本気にされたので、
 「冗談ですから」と返事をしたが本気にされた侭であった。そしてこの相談者の夫の相談に移って行った。


 そのあと三人のお客を視ていたらそこに突然の雨が降り出したため、アーケードの中に移動した。 ここは
雨には濡れないがだからと言っても横風が吹けばやはり雨には濡れるのだ。その雨のためか人通りが減っ
たように感じた、そのため今夜はもうお客は来ないだろうと考えて見台を片付けることにした。

そして師匠が居る場所を見るともういない、おそらく早終いしたのであろう。そして帰り支度をしていると見た
ことのある男性が目の前を雨に濡れながら通って行きその顔を見て思い出した。それは学生時代に嘘つき呼
ばわりされていて皆からのけ者にされていた男であった。あることないこと嘘ばかりついて皆を困らせていて
その後詐欺を働き別荘に行ったと聞いた。やはりである。
 今目の前を歩くと云うことは別荘から帰ってきたのであろう・・・・そして新市街にあるグロ○○スナックに行く
のだろうが嘘つきの癖は治ることはないだろう。その事が原因で皆から袋叩きにされた人物であるから、
 被害者がまた出るのだろうか・・・・・・・・・・・・・・・?


 それから時計を見るともう夜中の一時になろうとしていた今夜の街占であった・・・・・



 次の日も同じ場所に出店した。
 昨日の雨もあがり夜の帳も降りてここ下通りは多くの人が行き来する熊本一の繁華街でもある。どこもかし
こも商店は年末商戦に入り
きれいにしかも派手に飾り付けたネオンや装飾品そしてマネキンに着せた色鮮やかなファッションがお客の心を
惹きつける。そしてそんな環境の中、見台を組み立てお客を待つ自分の姿があった。

 そこに「こんばんはいいですか?」と二人連れの男性客が来る。
 「はい、何をみましょうか?」といつものように応えると、
 「今熊本で仕事をしていますが故郷の大阪にはいつ帰れるか見て下さい」と言う。
 大阪から熊本まで仕事をしに来ているが予定の1年が過ぎてもまだ帰れないでいるようだ。そこで断易にて
拝見してみれば需の泰を表出、なんともわかり良い的確な卦が出た。これは納甲を振るまでも無く来月には
動く・つまり帰れるのだ。そこで、

 「これは来月には帰れますよ」と言えば、
 「そうなん、ほな良かったなっ」と二人で顔を見合わせて笑顔になり、見料を払うと「おおきにっ」と言い帰って
行った。
 熊本の水は合わないのかそれともやはり住み慣れた大阪がいいのかわからぬがお客の安心した顔が見れて
良かった。


 そしてそこに次のお客、黙って手を差し出す。
 「はい」と言いその手をとれば、不運な手をしている。このお客は口下手な不器用な性格である。所謂態度が
全てを現すと云う見本のような男である。どう答えるか・・・・・そこで

 「貴方は何事にもその侭態度を出す性格ではないために時として人間関係にヒビが入ることがあります、また
人から誤解をうけることも多く損な面がありますが、今後はその場で自分の気持ち態度を正直に出して行けば
良い方向に改善されて楽しい人生・仕事が送れるようです」と伝えると、一言「そうか」と返事をしたが料金を置く
とその侭何も言わず歓楽街へと歩いて行った。改善出来れば良いのだが・・・・・・

 それから5人ほどのお客の相談をうけてそのお客が途切れると、
 「こんばんは、これ良かったらどうぞ」と言ってすぐ隣の商店の奥さんからパンを戴いた、今夜はもう閉店の
ようで、有難くお礼を言うと帰って行かれた。仕事していると何も食べれないなか本当に有難く戴いた。

 その後もお客は続き、終わったのが午前2時半であった・・・・・



 今夜もまたいつものようにここ下通りの歓楽街の片隅に店を出した。出すのは何時も夜からなので昼間の顔
とはまた違う熊本の顔がある。住んでる者は熊本が都会と思っているらしくどこを基準にして見ているのかわか
らないが、そう思う人がいるのも事実である。閉鎖性も強く大きな大会や全国の人が集まる・集めることの出来る
施設など何時まで経ってもできる訳がなくイベント市長や権力しがみつき知事らで狭い部屋が益々狭くなりつつ
あるここ熊本である。

 さて今夜の最初のお客は中年婦人。
 「見て下さい」と言い次に「あら、若い方ね!」と言う。間近で見たのは今夜が初めてであろうか、こちらは若くて
もここにどうして出しているか?出せているのかまでの考えは及びもしないだろう。そこで驚かしてやる為に、
 「貴女は今娘さんのことで悩んでいますね、そしてそれはその娘さんが今離婚の危機にあるでしょう?」と、答え
たものだから驚嘆して、
 「へぇっ」と言い、驚きの眼をして、
 「まぁっ、ほんとにわかるのね!」と言われた。これで少しは若くても信頼関係が築けるはずである。そしてそこ
から色々と娘婿の話に始まり、最後は相手の親の話にまで及んで行くことになった。原因を調べればこれは夫婦
間にまだ子供が居ないことと夫の金使いが荒いことに起因しているのがわかる。

 そこで今後を見れば子縁薄く不妊治療の話をすることになった。やはり親の立場としては気が気ではないので
ある。地蔵菩薩の力にお願いするのもひとつの方法であるので伝えると、
 「そうですね、わかりました」と言うと見料を払い帰って行かれた。


 子供の守護を地蔵が掌ると言っても信仰心の無い者に話してもいたずらに時間の無駄になるだけであろう、と
考える街占でもあった。




 今夜は要る物があったのでスーパーから先に行った。入店してすぐに私を見て○○が来た!と顔を見て言うで
はないか。その男は出腹の背も低い短足の禿げ中年オヤジがそこに居てなんとキツネにとりつかれているのだ。
 自分の顔を見ていまひとつはっきり何と言ったか聞こえ難かったが、修験の神を祭祀しているのでこういう
キツネにとりつかれた男は私を警戒するらしい。降伏されるとでも思ったのであろう?それなりに力がある事を
認めてくれたのかは知らぬが、お告げを出すのはいつもキツネやへびがそうするのであるから皆は有難く伺い
参じるが、その末路がどうなるのか一般の者は知ることも無いのだ。

 家にもごく潰しのババアが何人か居ます、と或る寺の人間が言う利用するだけ利用してそのお蔭でお客が今迄
来ていたのに、力が無くなると今度はごくつぶし呼ばわりされる・・・・
 初めは味方するのであるが、いいように使われ続け或る日見えなくなると頭が狂い出し、守護してると言えば
聞こえは良いがその末路を知る者はいない。


 さて今夜は太洋デパート前に出した、通行量は多いが果たしてどう出るか?組み立てているとすぐに「見てもら
えますか?」と女の二人連れ、「はいどうぞ、何をみましょうか?」と言えば、
 片方の髪の長い女性が、「わたしは何時良くなりますでしょうか?」と言う。若い人であれば結婚はできるか、
いつ結婚とかを聞くことが多いが事情があるようだ。それは家庭・父親と見た、そしてやはりそうだったのである。
どうやら父親が何時も酒を飲んでは家人に暴力を振るうので何時になったら良くなるかとの質問であるのだが、
それでは父親の酒癖のことを質問すれば良いのだが・・・・

 見るとまだまだ続くので気休めにあと五年くらいすれば良くなりますよと答えるしかなかった・・・・・



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