今夜は少し遅くなったがいつものようにここ下通リの歓楽街のど真ん中に店を出した。時計を見れば夜の10時になろうとしていて人通りは多く、買い物客や飲みに出た人に食事の帰りであろうか多くの人が行き来をしている。そんな人を横目で見ながら見台を組み立てると、後はローソクに火を灯してこれで準備が整いあとは相談のお客を待つのみである。
 そこにひとりの御婦人が来て、
 「お願いします」と今夜の最初のお客である。この人は少し勝気な面があり、おそらく家庭の問題しかも夫とうまくいかない、その事を見て欲しくてきたのであろうと考え、
 「奥さんは夫との問題を見て欲しいのでしょう?」と言えば、
 「見る前にわかるの?」と言うので、
 「はい、何でもわかりますよ」と言い、的中したのであとはこちらの考えに沿って楽に仕事が進んで行くことになった。
 夫婦も20年も暮らしていれば意見が合わなくなることも多くなるがそこは我慢も必要になると云うものだ。いつしかそんな事も伝えるとこの相談者は、
 「わかりました、やってみるわ」と言うと、下通りの人混みのなかに消えて行った・・・・


 続いて来たのは中年男性である。来てすぐに「若い手相見さんだね」と言う。そこでこちらも「はい」と返事をして
 「なんでも拝見しますよ」と言うと
 「実は家庭のことなんだけどわかるか?」と聞くので
 「はいもちろんです当ててみましょうか」と言い
 「今家庭のなかで妻のこともありますが本命は子供さんの進学問題でしょう」と言うと、
 「おぉわかるんだな」と言い的中したのでそれから内情をこと詳しく話してくれた・・・・
 本人は東京の大学を望んでいるが親としては地元熊本の大学に行って欲しいのである。それで話をしているのだがなかなか決まらないとのことである。そこで見てみるとこれは東京にも魅力があるがひとり生活して行くのは大変であることがわかる。それで、
 「これは熊本の大学が安泰と出ています」と告げれば、
 「おぉ、そうなんだね、それなら参考にして話してみよう」と言うと、笑みを浮かべ見料を置くと帰って行った。


 次に来たお客は紹介された人である。飛び切りの美人さんでありさて今夜の相談はおそらく、お付き合いの件と見ていると、
 「実は交際している人のことを見て欲しいのです」と言う。やはりそうだったと思いながら拝見すれば、複雑な状況が見えてきたので紹介でもあり、言葉を慎重に選び答えると、
 「やはりそうなんですね」と言う・・・・
 つまり相手の男性は家庭持ちなのである。それも最初は独身であったのだがいつの間にか結婚していたのである。そこで、
 「これはいつになっても実らない交際です、お互いが傷つき良い結果は得られず結論を早く出した方が良いと思われます」と返事をすれば、
 「わかってはいるけど、そんなのが出ているのなら考えてみます」と言うと、こちらも、
 「そうですね」と言い見料を机に置くと、
 「ありがとうございました」と言い帰って行った・・・・



 
それから独りの男性がこちらを見ている、どうしようか考えているのだろう、こちらが若いので考えているのだろうが見て見ぬふりをしていると見台の前に立ち、「当たるか?」と言う。こう言う質問には、いつも「はい」と答えることにしている。するとズボンの中に入れていた手を目の前に差し出した。
 手相を見ればあまり良い手相ではなくしかも融通が利かない相である。そこで、
 「貴方は自分の興味の湧くことにはなんでも熱心に取り組んで行きますね」と言うと、顔に答えが出た。
そして
 「今後はどうか?」と聞いてくる。「人との関わりが大事です、しかしあまりうまくいかないようです」と言えば、
 「ふうん・・・・」と言う・・・・そこに次の客が並んだため料金を話すと見台に置き帰って行った・・・・


 並んだ客の相談は昨日受けた試験に合格するか?とのことである。直ぐに見てみればこれは無理と出た。
 そこで「これは無理ですね」と伝えると「えっ」と言いがっかりした様子である・・・・まだ発表はあってはいないので結果は出ていないから決定した訳ではないが顔には不安さが現れているのが手にとれる・・・・
そして、「また来ます」と言うと、見料を置いて下通りを後にした・・・


 
 次の日は少し遅れてまた銀座通りの交差点横に店を出した。いつものように人の行き来は多く、しかしその割には相談に来るお客は少ない。そして時間も夜の10時ひとりの男性が「見てくれ」と来た。
 顔を見ればどうやら困りのかたちが出ており、これは事件に巻き込まれて今苦しんでいると見て、
 「何をみましょうか?」と聞けば、「何か見えるか?」と聞いてきたので、ここぞとばかり
 「貴方には今災難の相が出ており何か巻き込まれている姿が見えますが」と言えば、
 「おぉ、わかるんだな!」と言い見事に的中したことで内情を事細かく話すのであった・・・・そして帰り際には
 「言われた通りにやってみるよ」と言うと、来た時の暗い顔が明るくなり、これより解決して行くことを知らせている場面が見えていたのである。解決すればそのときにはまた訪れてくるだろうと読んでいた・・・・・


 次に来た客は出勤前の女性、この界隈は水商売に風俗と多くの店舗が犇き合うところである・・・・すると、
 「何でもわかるの?」と聞いてきたので、
 「わかりますよ」と応えるとすぐにその右手を差し出した。きれいな手をしているが心の中では今異性のことで大きな悩みを抱えていることがわかる、その問題も深刻でありここに来たのだ。そこで、
 「今貴女は男性のことで大きな障害に直面していますね、顔にも手にも出ていますよ」と、言うと、
 「わかるんだね、そうなのよ・・・・」と言う・・・・・そして、
 「これからどうなるかわかる?」と聞いてきたので、
 「これからは別れようとしますがなかなかそれができません、しかし来年になれば男の方には新しい女性が出現するためその時に本当の別れが訪れることになります」と断言した。そのことを聞いたその女性は、
 「そんなのが出ているのならそれまで待つことかな?」と言い、見料を机に置くと急ぎ足で帰って行った・・・・


 
次に来た客は若いカップルである。女性の方が「見て下さい」と言う。二人の間には暗雲が立ち込めているのを見逃す訳も無く、
 「今お二人は今後どうして行くか迷う分岐点に立ち苦しんでいますね」と言ったものだから、
 「見る前にわかるんですね」と言い、小さな声で「実は今少し嫌気が差してきているんです」とのこと。もちろん
男性にはこの通りの雑踏が邪魔して聞こえはしない・・・・そこで今後を見れば凶と出た。そのことを伝えると、
 「そうですね・・・・」と言い沈黙の後に、料金を置くと帰る二人の姿であった・・・・




次のお客は紳士である、さしずめ50代かと見るが、言われるのは、
 「帰るときにいつも見ていましたが若いんですね」とのこと。ここらには若いのは自分だけであり、
 「そうですよ、なにを拝見しましょうか?、気になることがあるのですね」と言うと、
 「はい、では見てもらいましょうか?」と言い黙って右手を差し出した。仕事をしてる男の手であるがどことなく力が弱い、運命線は力強く伸びているが中途で止まりこの人の立場の障害を現す。そこで、
 「今貴方は会社を辞めて独立したいようですがそれかもう独立の動きなのですがなかなか進まず困る形が出ていますよ」と伝えると、ビックリした顔をして、
 「そうなんだよ、わかるもんだな!」と言いこれからどうなるのか、と尋ねられることになった。
 いろいろと占断して終わったのは50分後であった。良い方向に向かうと良いが・・・・



 
その後来た客は勤め帰りの女性である。
 
「何を見ましょうか?」と言えば
 「・・・・・・・」黙したままである。そこで当てて欲しいと言う事かで、
 「貴女は会社と家の往復で疲れているようですね、仕事を辞めたいのでしょう?」
と言えばやっとその重い口を開いた、
 「わかるんですね」と言う、早く言えば手間も掛からずだが街占の宿命なので仕方ない・・・・・

 そこで拝見すればこの人は早く結婚して家庭に入りたいのであるがどうしても男性と永続きしない。
それらのことを伝えると急に暗い顔になったのでいつ、良い人が出るのか調べると来年出現すると出た。そこでそれを伝えると、
 「ほんとうですか?」と言い、
 「来年の5月に新しい出会いがあることを告げると」、急に明るい顔になり、
 「期待してそれまで待ちます、今日はありがとうございました」と言い、見料を置くと急ぎ足で帰って行った。





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