旅占物語

 今日から少し足を伸ばして県外のS県で行う事とした。同じ場所で行うとそれなりにファンも出来るが、生来の旅好きが災いして遠方で行うことでまた自分にとっての新しい発見があると読んだからでもあった。

 バスを乗り継ぐこと4時間近くかかったが夕方には予約しておいた旅館に着くことができた。以前の知り合いもいるが人ばかり頼っていく生き方は性に合わないのでこの旅館でしばらくお世話になることにして荷物を部屋に置くと街に出てみた。

 流石に観光地だけのことはある、それなりに人も多く一目で観光客とわかるが果たして明日に繋がる相談者は何人いるだろうかわからない。それよりも今回は日切りの旅でもあるので依頼していたチラシを印刷会社にとりにいくと、既に
梱包してありきれいなチラシができていた。そしてその足で新聞販売店に行き
折込を頼むと後は相談者を待つだけなので街の商店街に足を運び情報を集めることも忘れなかった。

 この街は観光と農業と漁業で生計をたてているのでその生計に季節での波はあるかも知れないが、悩みを持つ人も多い筈である。

 帰りにおいしそうな店が目の前に飛び込んできたのでそこで食事をして、ふと時計を見るともう九時になろうとしていたので旅館に戻って明日に備えることとした。
 翌日「朝食ですよ」との声で食堂に降りて行くと他に五人の泊り客がおり一緒のテーブルで、珍しい地元の海鮮料理を堪能した。

 そして定刻の九時になったのでので部屋に戻ると、「お客さんですよ」と、仲居さんが最初の相談者を案内してくれた。意外に早く来たんだなとの感があったが幸先いいかも知れないと思う自分がいる。

 年の頃40歳代、一見して主婦とわかるが流石に観光地の人は若く見える。話しを聞いてみると
 「結婚してもう15年になりますがお互いほとんど会話がなく、主人はたまの休みでさえ魚釣りに出掛け、ほとんど家にいることがなく、もうこれ以上続けていくことが難しい気持ちになっています。今日広告を見ましたのでこちらに伺いました」と話される。

 話のなかで顔を拝見すると孤独の相が出ており話が本当であることがわかる。難しいと観れるが、わざわざ早く来られたのであるからそれなりに断易にも問うと遯の卦が出る。本人の今の気持ちにピッタリではないか。だから別れろとは
ならないが、なんでもかんでも前向きになる気持ちを持たなければ出来る話も
できなくなるので、

 「奥さんがご主人の機嫌を見て、いいと思われるときに自分も行動を一緒に
したらどうでしょう、魚釣りでも一緒に行きそこで話のきっかけを掴んでくだ
さい、おそらくその行動が好転のきっかけになる筈です。試して下さい」と
伝えた。そして年忌が疎かになっている亡き父親の供養をしないといけないことなど、細かいかい点も話すると納得したのか、
 「ほんとに当たるんですね、思い当たることばかりです、わかりましたやってみます」と言い来た時とは大違いの明るい顔をされて帰って行った。

 離婚を考えてみるもののいざ実行に移すとなると勇気も知恵も要るし、女性は大変である。
ただし今の世の中は女性も働くことが多く、またその機会も多いので離婚は今後
も増え続けていくのではないだろうか。


 続いて来たのは若い女性、見た瞬間○○が見えたがそれには触れず
 「何を拝見しましょうか?」と聞けば、
 「今この町で働いているけど国にはいつ帰れるのか見て欲しいの」とのこと。やはりそうかと思ったが、わかりましたと言い拝見すると、人とのトラブルが出ていた通りの結果が示される、
そこで、

 「今、夜の仕事をしておられると思いますが、もう少しで目標額の○千万円になるでしょう?」と切り出すと、
 「えッ、なんでわかるの?」と言う、しかしそれには答えず更に、
 「早くやめて国に帰ることです、でないとおそろしいことがおきます」と断言した。なぜならこの女性の後ろに刃物を持つ男性がいて今にも襲いかかるところが見えたのである。それも伝えると、

 この女性には思い当たることがあるらしく、「やっぱりそうなんだ」と言うので、
 「お金も大事ですが命はまだそれ以上に大事ですよ」と伝えると、しばらく黙していたが
 「ほんとね、来て良かった、ありがとうございました」と丁寧口調になり、
お礼を述べて帰って行った。


 人間の運命は時に紙一重、そこに1秒の差1分の差で運命が分かれる・・・・・この女性も決断出来ればいいがと思わずにはいられなかった・・・・・


   続く>>

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