・何時見ても変わらぬここ下通りの風景、何が起きようと我感知せずの都会とは違い他人のことには何
でも関心を持つくせに自分の事は例え指摘されたとしても、なんにもわからぬ県民性・・・?

 今夜も売卜の為にここ下通りに店を出して早1時間、未だ誰も来ず暇なので持参した本を読んで相談
者の御到来を待つことにした。
 それからしばらくして「こんばんは」と声がしたので顔をあげると目の前にひとりの女性が立って
いた、今夜の最初の相談者である。

 「はい。何を拝見しましょうか?」と声をかけると、
 「わたしの今後を見て下さい」とのことである。 また腕試しかと思い少し腹が立つ自分がいるが、
これも売卜の為には仕方のないことと割り切り見てみることにした。

 断易にて卦をたててみれば山火賁を表出、やはりと思い
 「あなたは今三角関係で苦しんでいますね」と切り出した、するとあっさりと

 「そうです」との答えが返ってきた。動爻あり世爻も剋去されいずれはひとり飛ばされ傷つく身、
しかし今それを言ってもこの人相では聞く耳持たぬであろう、しかし、
 「今後は心の戦いが増しあなたも相手もその戦いに巻き込まれて後悔の人生を送るでしょう」と答
えるしかなかった。
 「その先はどうなりますか?」と更に質ねてくるので、
 「行き着くとこまで行くでしょう」と断言した。

 何でも自分だけが良ければそれでいい社会の風潮、他人に迷惑をかけていてもそ知らぬ振りで済ませ
る誤った社会、他国から領土を乗っ盗られても奪い返すこともできないこの国とおんなじ人間の業と
その欲望・・・理想ばかり言い続ける既存の宗教、自分は苦労することがないため何にも知らぬ代表・

 占断が自分の気に入らぬ答えであろうか、見料をさっと置くと黙して帰って行った。
 いつも思うがこの仕事はサービス業ではないのだ・・・
続いて来たのは男性、物腰柔らかそうであるが果たして、

  「実は昨日スピード違反をしたようで捕まりますでしょうか?」との問占である。それは違反
すれば当然オービスが反応するであろうと思うが仕方なしに占断すると、
厳しい顔が出ているではないか、従って、

 「もう無理ですね、ここ2〜3日位にハガキが届くでしょう」と伝えると、とても困った顔になり
 「なんとかできませんか?」と喰い下がるので、
 「これはもう駄目です、しかも公務員などの場合にはその職業を知られてしまいますし報告され
ますので」と答えるしかなかった。

 飲酒・スピード・無免許を交通3悪と呼ばれて久しい。どうしようもないので認めてスッキリし
たがいいことを伝えるしかなかった。




 翌日は少し早めに店を出した、いつも遅い時間が多く深夜は酒の入るお客も多くその点昼間は楽だ
からである。

まだ明るいここ下通りの商店街、行き交う人々、買い物をする親子連れ、楽しそうに腕を組むカップ
ル・・・・・
 そして今日は少し新市街方面へ寄ったところに出してみた。やはり予感はすぐに的中、早々とお客
である。

 「みてもらえますか?」と相談者、まだ若く20歳そこそこであろうか?
 「はい、何をみましょうか?」と聞けば、
 「今大学生なのですが今後のわたしの進む方向性と云うか、これでよいのかを
みて貰えますか」と云う相談である。


 或る程度は決めている筈だし、ほぼ決まっていると思えるのであるが、やはり何かこの先不安が
あるのであろう、調べていけば、意外にすんなりと答えは出た。
 易で云うところの泰である。これはこの相談者のこれより進んで行く道を表しており何も心配する
ことはないのである、しかしそこは若さ故不安も重なりこうして聞きにきたのであろう。

 「心配いりませんよ、一番良い容が出ています、貴女の進む方向は間違ってはいません、安心して
下さい」と伝えると、
 「そうなんですね、」と嬉しそうな顔に変わりお礼を言うと下通りの人混みのなかに消えて行った。




 それから続いてきたお客はカップルである。
 「みて下さい、俺達結婚できますか?」と言う。少し年齢差がありそうであるがともかく求めに応
じて拝見することにした。
年齢を聞けば女性が11歳上である。男23歳女性34歳となる。手っ取り早く易でみれば坎の卦を表出、
 これは今より深みにはまり進んで行くことを現している。しかし普通ではないだろう、つまりは
駆け落ちか逃避行でありまともな結婚はできない、つまりは女が夫持ちとみている自分がいる・・・

 そこで、
 「お二人は交際はしていきますが貴女が夫持ちのため最後には駆け落ちになるでしょう。」と伝え
ると。図星のようでふたりで顔を見合わせていたが、見料を払うと直ぐに腕を組んで帰って行った。

 そのカップルが帰ると選挙の演説が始まり出したので、今度は場所を銀杏通りに移した街占であっ
た。




 それから夜の10時まで20人以上の相談者をみて今日は終了する筈のところいつも来る人がお客を連
れてきた。

 「お客さんですよ」と言いながら駆け寄る、いっ見ても若若しく明るい人であるが連れて来た人は
暗い・・・しかも顔には災難の相、

 「事故されましたでしょう」と本人が話す前に聞いたのでやはりではあるがビックリされたようで
 「そうなんです、なにか私にサワリがありますでしょうか?」と問われる。

 そこで拝見すると、なんとお墓が見える、これはこの人の住んでいる家に死人が近付く象である。
 「お墓が見えるのですが家のところにありますでしょう」と問えば
 「いいえありませんよ、」と言う。しかしそれはおかしいのでよく聞いてみれば昔行き倒れになった
人のお墓というか墓標があったことを聞いたことがありますと、連れて来た人が言った。

 それが今でも供養を欲してこの人のところに災難を齎しているのだ。
 
 そこで明日供養をする為にいつも行く真言宗の寺院にて修法することにして今夜の街占を
終了した。

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街占1

街占


街占物語







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